魔性の後輩に見送られ、イルミナの街を後にしたローナ達3人。
目指す先は深緑の次元「スカイウッド」。巨大な世界樹を中心に、次元全体がほぼ森で覆われている次元だ。
太陽の光が入ってこないため一見して薄暗いのだが、木が持つマナの力を利用して文明の力を使わない照明となっているのだ。そのため常に不自由のない明るさが保たれている。
一方でエリシオンやアズマのような近代的な文明はほとんどなく、住民のほとんどを占めるエルフや獣人族は伝統的な古い暮らしをしている。ただしエリシオンの森にキャンプを張っていた人狼族、特に傭兵稼業で次元を飛び回るレイズのように、刺激を求めて外の次元に出る者も少なからずいるということだ。
そんなわけで3人は人狼族の長に話を通して、早速スカイウッドへの扉を潜らせてもらうのだった。
「長に書いてもらった地図だと…こっちね!」
地図を持つクララが先導して歩いていく。
長から聞いた話ではスカイウッドには森の神が祀られている神殿がいくつか点在し、そのうちのひとつに似たような宝珠が祀られていた、という噂も耳にした。
「私の宝珠から強い力を感じる…近づいてるみたい」
「はい、わたしの宝珠もいつもより強い鼓動を打っています!」
スカイウッドの森の道は前述したマナの力により邪気が少なく、危険も少ない。そのため3人はいつも以上に悠々と歩いていた…のだがその時!!
「!!二人とも下がって!!!!」
クララが前に出て盾を構えると、上空から矢が飛んできた。クララは盾の中心で矢を防いだ。
「その盾…お前はイルミナの騎士か。何しに来た?」
3人が木の上を見ると、大きな弓を構えたエルフが立っていた。逆光で影しか見えないが、声や姿からおそらくは女性であろう。
「私はイルミナの騎士、クララ!決して怪しいものではないわ。さあ、私が名乗ったのだからあなたも姿を現して名乗りなさい!!」
クララが剣を突き立て声を上げた。名乗りに応じるかの如くエルフの女性は3人の目の前に着地し、名乗りを上げた。
「私はこの先の神殿の守護者、ラシノス。人間達よ、ここはお前たちの来るところではない。とっとと立ち去れ!!」
いかにもエルフ然とした美しくもきつい顔立ちに緑がかった金色の長い髪、森林に溶け込む深緑色のマントと茶色いミニスカのワンピース、茶色いブーツを履いた美女であった。その姿はまさに「美しき森の守護者」と言ったところであろうか。
「あっあの…急に森の中に入ってしまったことは謝ります!でも…私達この先の神殿の宝珠の力を…借りたいだけなんですっ!!」
ナタリーが手元の宝珠を見せてたどたどしく説明をする。
「宝珠だと…?何故お前たちが宝珠のことを…?そしてその宝珠は一体…?」
ローナが今までの経緯を説明した。宝珠のこと、母親のこと、そしてオロチの復活が迫っていることなど諸々だ。
「…そちらの事情はある程度はわかった。」
「じゃあ神殿に」
「ダメだ。」
「ええっ!?!?」
ラシノスがいうには、スカイウッドの世界樹には東西南北に神殿があり、かつては4つの翡翠がエネルギーソースとして置かれていた。しかし現在4つのうち1つが破損により失われており、その代用品としてアマテラスが残した宝珠を使用しているとのことである。
「宝珠同士を共鳴させるといったが、それで宝珠の力に不具合が発生しないとは言い切れない。私はスカイウッドの秩序を守る役目があるからな…無責任なことはできんのだ。」
「そんな…一体どうすれば…」
途方に暮れる3人と考えを曲げるわけにはいかない1人の背後、不穏な足音が迫っていた。
「フフフ…お久しぶりです皆さん。今日こそオロチ様の鱗の破片、渡していただきますよ。」
そこに立っていたのは、アズマで3人を襲った刺客であるカラスの姿だった。
~続く~