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【脳内創作】ローナ~銀陽の少女~ 第六話「神官の少女」

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 前回のあらすじ

nsmring-style.hatenablog.com

 

 イズモの力が籠められた宝玉を譲り受けたローナ、そしてローナの護衛を命じられたクララ。二人はギルバート騎士団長の紹介状を持ち街外れの神殿へ向かっていた。
修道院に務めている神官の一人がこう言った神秘的なアイテムに詳しいらしく、情報を集めるにはいいということ。といっても焦りは禁物ということで、少しイルミナの街を案内してもらうことにしたのだった。
物心ついた頃にはスサノオのはぐれ次元で修行の毎日を過ごしていたローナだが、イルミナの街はどこか懐かしいような雰囲気があった。

「初めてくる筈だと思ったのに…私、昔お母さんに連れてきてもらったことでもあるのかな…?」

ローナが母と離れたのは11年前の5歳の時。襲撃者の攻撃で荒らされてしまう迄はイズモはとても平和な地で、お出かけ好きの女王アマテラスはよく娘のローナを連れてお忍びで旅行を楽しんでいたのだ。
旅行のこと自体は記憶に残っているが、やはり襲撃時のショックのせいで幼少期の記憶があやふやになっていたのだった。

「ローナ…?黙り込んでどうしたの?」

変な顔をして黙り込んでいたローナに対して、クララが心配そうに話しかける。

「あ、クララ。うん、なんでもないよ!」

「そう?ならいいんだけど、悩みとかあったら私にも言ってね!!」

…うん、今は悩むのをやめよう!まっすぐ前を見て歩き始めたローナだった。

 

街の見物を終えて昼過ぎ、ローナとクララは件の神殿に来ていた。
外には眼鏡をかけた神官の少女が外を掃除していた。ここの神官だろうか?ローナは手紙を手に話しかけた。

「あ、すいません。ここの神官さんでしょうか?」
「あっ!はい!!そうです…!」
「あ、急に話しかけてしまってごめんなさい!私達、騎士団長の紹介で来ました。」

ローナが神官の少女に手紙を渡す。手紙を軽く読んだ神官の少女はお辞儀をして、修道院の奥へ入っていった。

「なんかそそっかしい女の子だったけど、大丈夫かな?」
クララが心配そうに話しかける。そのあと、さっきの少女が奥から出てきた。さっきの慌てようはどこへやら、非常に落ち着いた顔で中へ案内してくれた。

神殿の中、講堂で偉い神官が待っていた。早速宝玉を見せると、大神官が語り始めた。
「かつてイズモの女王、アマテラス陛下は7つの次元を渡り歩き、宝玉に自らの力を籠めて安置したという伝説があります。宝玉が実際にいくつあるのかまでは定かではありませんが、ここに二つ目の宝玉があるということは、伝説は本当なのでしょう。」
「…ちょっと待ってください…!?二つ…!?!?」
「はい、今から10年ほど前でしょうか。この神殿に訪れたアマテラス陛下はまだ幼かったこの子へ宝玉を渡していました。」

それは先程の神官の少女だった。10年前と言えば、あの襲撃があった前か後か一番はっきりしない時期であった。
でも間違いなく、母はこのエリシオンの大地を訪れている。それだけは間違いなかった。

「ナタリー、宝玉をこちらにお出しなさい。」
「はい、大神官様。」

ナタリーと呼ばれた先程の少女は、袖口のポケットから同じ宝玉を取り出した。どうやら二つの宝玉は共鳴し、強い光を放ち始めた。それと同時に、ローナとナタリーはエリシオンではない、違う次元の光景の幻視が見えていた。

「…今のは一体…なんだったんでしょうか…?」
ナタリーが目をこすりながら話しかける。ローナが目にしたのは「海」。それも広大な氷原が浮かぶ凍える大海原だった。

「ナタリーさん、だっけ?今…海が見えなかった…?」
ローナがナタリーに話しかける。
「!!!はい、見えました…!氷原が浮かぶ、寒い海でした!!」
「!?!?!?えっ!?なになになに!?!?!?!?」

状況が呑み込めないクララに、ローナとナタリーがゆっくり説明を始める。

「…なるほどね。宝玉を近づけたら、二人で同じ氷の景色を見た…ということかした?」
「そういうことです、今のはなんだったんでしょうか?」
「わからない…でも、宝玉が見せてくれたのなら、そこに行けばお母さんの手がかりがあるのかも…?」
「えっ!?お母さん!?!?!?!?!?ローナさんってもしかして…アマテラス様の御子息様なのですか!?!?!??!?」

説明してなかったためにナタリーが異様に食いついてきた。どうやらナタリーは10年前重病を患っていたが、ふと現れたアマテラスに救われ、この修道院に来てからずっとアマテラスを慕い続けていたとのこと。

「…状況はわかりました。ではナタリー、その宝玉をもってローナさんの旅にご同行させてもらいなさいな。」
「大神官様!?!?何を仰って…」
「君ももう小さい子供じゃありません、少し外の世界を学ぶにはいい機会です。よろしいですかな?ローナさん、騎士クララ殿。」
「はい、もちろんです。」
「よろしくね、ナタリー!」
「はい、こちらこそ…ふつつかものですが、よろしくお願いします!」

 

こうして、ローナの次元を飛び越えた旅にまた一人仲間が加わった。
「改めまして、ナタリーです。未熟ですが、神聖術と薬の知識が少しあります!よ、よろしくお願いします!!」
眼鏡をかけた神官の少女、ナタリーを連れて3人はエリシオン南の魔法国家、アルトランドを目指して歩き出した。

次回へつづく。