ニシムリングブログ

ニシムリングスタイル、キメていけ!

【脳内創作】ローナ~銀陽の少女~ 第二話「出会い」

前回


ゲートを潜り、生まれ故郷を経つローナ。
はぐれ次元からエリシオンへの距離はそこまで離れているわけではなく、ゲート内はローナの希望もあり徒歩での移動となった。
次元と次元を繋ぐゲートとはいえ、はぐれ次元からの道は大したものではなく、現実世界でいう古びたトンネルのようなものであった。

歩くこと30分程、イズモとエリシオンを繋ぐ道へと合流して、そこからは整備されて明るい道が続く。
とはいえ先の大戦でイズモは調査団以外の立ち入りが禁じられており、人通りはほとんど無く、ローナは1人その足でエリシオンを目指すのみ。

もう20分経つ頃、次元トンネルを抜けてエリシオンに到着した。
かれこれ1時間近く歩き通して疲れていたが、出た先は生憎森の中。端末(※)の地図を見る限り、近くに集落があったのでそこを目指すことになった。
※いわゆるスマホ的なものだが、世界観の都合でここでは「端末」と呼ぶことにする。

その時、ローナは背後から殺気を感じた。明らかに人間でも獣の類でもない異質な気配、七支刀を握り気を引き締める。
振り向いて気配の正体を確認。居たのは黒い影に取り憑かれた狼の群れ。数は3〜4匹といったところであろうか?
殺気こそ強いが、動きは鈍重。太陽神の娘であり、スサノオの弟子であるローナの敵ではなかった。
「あるべき場所へと…還りなさい!!」
七支刀に流し込んだ神通力を解き放ち、狼を傷付けずに黒い影だけを葬り去った。
狼の群れは黒い影の影響で体力を消耗していたのか、浄化された後しばらく眠りについた。ちょっと休めば元気になるでしょう。

更に歩を進めるローナであったが、先程の戦いで予想以上に消耗してしまい息が上がる。
今日中に集落に着くのは無理かもしれない…そう思った矢先、またしても周囲に異質な気配を感じる。
現れたのはゴブリンだった。先程の黒い影と違って知性もあってズル賢い手も使う。
一体一体の力は人間より弱いが、数が多くて多勢に無勢。疲れ果てたローナにとって危機的状況。
とにかく今は無事に集落に辿り着くことが大事。光を集めて、目潰しをして走り出そう。古典的な作戦だが今はそれしかない。

ー!!

強い光と共に駆け出したローナ。やはり疲労感は抜けずそこまで速くは走れず、目が慣れたリーダー格と何体かが追ってくる。
こんなところで負けてしまえば母を捜すどころか、命を落としてしまうかもしれない。捕まるわけにはいかない。とにかく走る。
だがそれも限界、ついに追いつかれてしまう。ローナは再び七支刀を握り、構えた。
「私は…こんなところで負けるわけにはいかない…。私は負けない!どんなことがあっても!!」
大きな声を上げ七支刀を構えた。襲いかかるゴブリンを斬り払い心臓を抉りつく。
エリシオンの大地ではモンスター退治にも免許がいるのだが、魔界のゲートから潜って登場したゴブリンだけは例外として、一般の旅人にも殺害が許可されている。
ローナの神通力によって高熱を持った七支刀は返り血と肉片を瞬時で蒸発、浄化させた。
この光景を目の当たりにしたゴブリンの大勢が恐れを出して逃げ出したが、それでも怖れない輩も居る。もう疲れたなんて言ってられない、目の前の立ちはだかるなら排除してでも進むしかない。

うまく敵の攻撃を交わしつつ、目に見えた最後の一体、おそらくはリーダー格の首を撥ねた。これで前へ進めるーと安心したのも束の間、その瞬間背後に鈍痛が走る。
隠れていた大柄なゴブリンが岩を投げつけてきた。幸いそこまで大きなものではなく、ローナの意識はまだあった。しかし疲れた身体に攻撃をまともに喰らってしまい、膝を付き崩れ落ちた。
幸い大柄なゴブリンの動きは遅く、距離も離れていた。絶体絶命だが最後まで諦めるわけにはいかない。そのときだった!!

大柄ゴブリンの背後に何者かが現れ、腕を一撃で斬り落とした。そこに立っていたのは長くて綺麗な桃色の髪の少女であった。
「何か騒がしいと思ったら、貴方達の仕業ね!さあ覚悟しなさい!!」
剣と盾を構えた少女は素早い攻撃とステップで敵を翻弄、片腕を失った鈍重な敵は追いつくことができず斬撃と盾による殴打を受け続けついに動きが止まる。少女がトドメを刺そうとしたその時、ローナは少女の後ろから、弓を構えたゴブリンの存在に気がついた!!

「危ない!!」

立ち上がり最後の力で七支刀を振り、神通力から発する剣圧で背後の敵を吹き飛ばした!だがあまりにも消耗しすぎたせいか、気を失いその場に倒れ込んでしまう。
「あの子あんなにもなって…!でも助かったわ!」

少女も勢いに乗じて、大柄な敵の首を撥ねた。薄暗い森の中での、ローナの初陣はなんとか勝利を収めた。

 

ローナが目を覚ましたとき、件の少女の姿があった。背中の痛みがない、手当てをしてもらったのだろうか?
「気がついたのね、大丈夫?」
優しい笑顔で少女が語りかける。どうやら助けてもらったみたいだ。
「ありがとうございます、貴方は?」
「私はクラリス・フォン・ワルキューレ、イルミナの騎士よ。騎士って言っても、まだ学校所属の見習いだけどね。」
イルミナとはエリシオン次元の一番の大都市。
彼女の話によるとローナが目指していた集落近辺に山賊やゴブリンの情報が多く、警備に回っていたとのことであった。
「そういえば貴方は?見たところアズマの学生さんみたいだけど…。」
「私はローナ。イズモから母を捜しに…」
「イズモ!?前に侵略で大変なことになったって…まさか貴方のお母さんって!?」
ローナは彼女に全てを伝えた。母の事も、自分が何故ここに居るのかも。
「…成程。にわかには信じがたい話だけど、貴方の眼を見れば本当のことだってわかる」
「信じて、くれるの?」
「さっきの凄い力も見せてもらったからね。あれを見たら疑いようがないって。…決めた!私は貴方のお母さん捜しに協力するわ!!」
ローナの話を受け入れた騎士の少女は心強い協力者となってくれた。
「ありがとう、えーっと…クラリス…さん?」
クララって呼んで!改めてよろしくね、ローナ!」
そう言うと少女は明るい笑顔でローナに手を差し伸べた。
もう1人じゃない、ローナの初めての仲間であり、初めての親友となった。

f:id:nsmring:20200405231524j:image

さぁ、ここから私達の旅を始めよう。

 

ーつづくー