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【創作】ローナ~銀陽の少女~ 第三十九話「次元を超えた絆」

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激化するオロチとの戦い。アマテラスの力を取り込んだオロチは無意識に【無勢陣】を張っており、連合戦線は一対多の戦いができずに代表者2名による精鋭戦にシフト。
両陣営のトップであるギルバートとスサノオによる猛攻撃を繰り出し、オロチの体内に騎士の大槍を打ち込むことによりオロチの身体の体質を変化させ、物理攻撃が通るようにはなった、
しかし瘴気により体力の消耗が激しく、5分程度で戦う力を奪われてしまう。幸いオロチが【無勢陣】に気付いておらず、こちらの戦略にもまだ感づかれていないため、早いうちにウミヒコと誰かに交代しようとしたとき、意外な助っ人が参上した。

「き…キーラの兄貴ィ!?それにペンギンの王様やアーデルさんも…どうしてここにィ!?」

それは遥か南海の氷の世界の住人、鯱戦士のキーラ。そしてペンギン帝国の者達だった。

「ローナから話は聞いた、あの黒いデカブツをぶっ倒すためにはるばるやってきたぜ!!」
キーラが拳を鳴らす。

「ぬふふふふ…今日は秘密兵器を持ってきたぞい!アンタークの科学力を結成して作った、その名も…【アイシクル魔導砲】!!これをこう…チャージする間になんとかもたせといてくれぃ!!」

自慢げなペンギン皇帝、そして砲手及び組み立ての指揮も務めるアーデル。ペンギン兵達はすぐに魔導砲組み立てに取り掛かった。

「おうウミヒコ!あいつに見せてやろうぜ…俺達の【実力】ってヤツをなァ!!」
「おう!!」

「ムッ…貴様ハ…ナンダ?変ワッタ格好ヲシテイルナ…」
「おうおう、テメェがオロチって奴か!よくも俺をあんな目にあわせてくれたな!!」

かつてキーラはオロチの瘴気が詰まった物体、通称【鱗】を埋め込まれ、暴走していたことを覚えているだろうか?
それをローナにより助け出され、正気を取り戻した。つまり今回の出陣は彼にとって「恩返し」であり「仇討ち」ということにもなる。

「貴様ノコト等吾輩ハ知ッタコトデハナイガ…歯向カウナラ貴様モ滅ボシテヤロウ!!」
「けっ、抜かしやがれ!後悔すんなよ黒焦げ野郎!!」
キーラが構えて、気を高める。溜めた気が口から、高圧エネルギーとなって放出される!

「まとめてぶっ飛ばしてやる!!!!!!!!」
「甘イワ!!!!」
キーラの放ったプラズマキャノンは、オロチの口から放たれた瘴気の渦に呑まれた…が、その時だった。

「甘いんだよ!!!!!」
プラズマと渦の相殺を見計らって、キーラが気を高めオロチに飛び掛かった。
渾身の拳が硬化したオロチの身体に炸裂した。

「キョアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」
「見たか!これが俺様の一撃だ!!」

「まだ終わりじゃない!オラもいるぞ!!」
「グッ、ワダツミノ小僧カ!コシャクナ!!」
「うおおおおおおおおおおおおおっ!なんとかなれーッ!!!!!」

オロチの後ろ側からウミヒコが三又槍を構えて突っ込んだッ!!
「グッ…ガアアッ…!!」
「やったか!?」

オロチの背中を突き刺し引き抜く。手ごたえがあった、相当なダメージが入ったと思われるが…
「ゲファファ油断シオッタワ小僧…ソウイエバアノ小娘ノ姿ガ見エンガ…尻尾巻イテ逃ゲ出シタカ?グフフ…」
「なんだと…?もう一回言ってみろ…!!」
突如ウミヒコを挑発するオロチ。

「母親ガコウシテ危機的状況ナノニ見捨テテ逃ゲオッタカ、薄情ナ娘ダナ…」
「うるせえ黙れ!!ローナへの侮辱は!!!このオラが許さァァァァァァァァァァん!!!!!!!!!!」
ウミヒコ、キレた!!

「待て小僧!気を荒くするな!!それこそオロチの狙いじゃ!!」
「ソウダ…モット怒レ…!ソレコソ吾輩ノ力トナル…!!」

オロチは元々怒り・哀しみと言った負の感情により生まれた存在。そんなオロチにとって若く、潜在能力も高いウミヒコの「怒り」の感情はまさに御馳走だった。
スサノオの静止もむなしく、オロチはウミヒコの怒りを吸い、ダメージを回復し瘴気を増幅させた。

「サア小僧、終ワリダ…!滅ビロ!!」
オロチが強大になった瘴気の炎を打ち出す。
「あぶねえ!避けろウミヒコ!!」
「アッ!!」
キーラが飛び出し、ウミヒコを突き飛ばした。

「ぐっ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「あっ…兄貴ィ!!」
「ククク…命拾イシタナ小僧…」

炎を食らい、その場で倒れ込むキーラ。
「兄貴…兄貴ィ…ごめんよ…オラのせいで…こんなことに…!!」
「へへへ…好きな女をあんな風に言われちゃ無理もねえって…とりあえず俺はなんとか大丈夫だが…さすがに辛ぇぜ…」
強まる瘴気、キーラは致命傷こそ免れたが体力の限界が近い。ウミヒコも落ち着きは取り戻したが今は精神が動揺してそれどころではなかった。

「皇帝殿、魔導砲の準備は!?」
「むむむすまん…まだまだかかりそうじゃ…オロチが気付いてないのが幸いかの…」
「騎士団総員!手の空いているものは魔導砲の準備を!!医療班は海の戦士二人の救援を求む!!」
慌ただしく動く騎士団の元に、またしてもローナの「友」と言える人物が現れた。

「ここか…なんて強い瘴気だ!忌々しいな…」
「あの黒いのが今回の獲物か?カネにはならなそうだが…あいつの頼みとあっては断れんな…」

森林次元スカイウッドより現れし、森の美しき射手ラシノス。そして次元を飛び回り戦い続ける人狼の傭兵レイズ。

はえ~おっきぃ…でもローナちゃんのお母さん助けなきゃだもんね!やってやろうじゃん!!」
スサノオ殿、お久しぶりでございますぞ!」
「その姿…ネサクか!その娘が、例の孫娘のリサじゃな。二人とも、よく来てくれた!」

かつて旅をした、アズマより最強の女子高生リサ。そして祖父であり師範、イズモ出身の格闘家であるネサクも到来。

「ふう…着きましたか。なんという有様、だが…不思議と戦士としての血が騒ぐ…!!」
「バサルトよ、お主は戦いに集中せえ。わしらの熱き魂で、この禍々しい空気を吹きとばすのじゃ。」

溶岩次元ヴォルカノンより来たれりは炎蜥蜴人、サラマット族一同。
一番の戦士であるバサルトを筆頭に、長老と4名の楽器を持ったサラマットの若者が列をなして戦列に加わった。

「おお…貴方達が、ローナが旅で紡いだ【仲間】ですね?」
ローナの呼びかけにより、またしても強力な協力者が現れた。
彼らは初対面だが、思いはひとつ。【イズモを取り返す】。

ローナがこの場所にいなくとも、彼女が作った絆は確かにそこにあった。

「騎士団長、ギルバート殿と言ったか?この瘴気の渦…まずは私になんとかさせてくれないか?」
最初に名乗りを上げたのはエルフの射手、ラシノスだった。彼女は弓矢・ナイフの他に精霊術を得意とし、ナタリーから伝授した浄化の法術もまた研究していた。

「戦場に立てるのは二人でしたな、それならば小生がお供致しましょう」
続けて名乗り出たのはサラマット族の若き戦士、バサルト。確かに炎蜥蜴であれば溶岩の鱗で、オロチの瘴気を防げる。

「了解した、では貴方達に任せた。残りの者は代表者の状態に気を配りつつ、任務を遂行せよ!!」
「「「「ラジャー!!」」」」
騎士団・イズモ兵団共々慌ただしく動き始めた。

「さて…バサルトが戦っておるのじゃ…儂等もまた、役割を果たすのじゃ…皆の者、準備はいいか?」
「「「「ハッ!!」」」」
サラマット族が鉄や石でできた楽器を広げ、叩き始めた。そう、【演奏】である。
サラマット族は音楽に精通している部族で、戦いの際は打楽器を中心とした、燃えるような戦いの旋律を奏でる。
それを聴いた戦士は不思議と身体が軽くなり、力も沸いて出てくる。絵空事のような話ではあるが、それこそがサラマット族の強さのひとつなのだ。

「グッ…ナンダコノ耳障リナ音ハ…ヤカマシイワ!!」
「不思議だ…聴いたことがない曲なのに力が沸いてくる…まずはこの瘴気を払うッ!!」
ラシノスが矢先に浄化の魔力を込め、天に矢を放った。空気中の瘴気がみるみる浄化され、視界も晴れてきた。

「エルフの弓術、見事…!今度は小生の役目!!」
バサルトは鈍重そうな石斧を両手に持ち回転し、大きくジャンプしてオロチに斬りかかった!!

「グギギ…蜥蜴風情ガ…調子ニ乗リオッテ…!!」
怒るオロチを横目に、身体を斬り続けるバサルト。そして飛び散った瘴気の破片をラシノスが弓矢で打ち抜く。
初めて会ったとは思えない、非常に息の合ったコンビネーションを見せつけた。

「瘴気は破った…が、なんなんだこの身体の疲れは…!?」
「ふむ…まさかとは思うが…我々以外には…【強すぎる】のか…!?」

サラマット族が奏でる鼓舞の音色。それは力強い戦士に力を与えるものの、体力消耗も早くなる。
ラシノスは蜥蜴族に体力で劣り、尚且つ魔力を使う戦いをしていたため、想定以上に疲れ切っていた。

「ドウシタ、ソレデ終ワリカ?長命種イエド所詮ハ下等生物ナノダ!!滅ベェイ!!」
「しまった!避けられない…」
「むぅん!!」
バサルトがラシノスを庇う位置で斧を構え、瘴気の炎を防いだ!!

「射手殿、一旦下がるのだ!別の者に交代を!!」
「はあはあ…すまないッ…!!」

「ねえ蜥蜴さん、曲のテンポ…ちょ~っと早過ぎない?」
「これはこれは、騎士団の歌姫殿であるか。この早い鼓動が戦士の力を高めるのだ」
「うん…確かにすごくいいんだけど…それじゃあみんな疲れちゃう。もう少しテンポを遅くできないかな?そうしたらエルフのお姉さん…回復できると思うの」
演奏隊に声をかけたのはココロだった。蜥蜴族の演奏に回復の術は、本来ないはずである。
「それではココロ・クオリア、トカゲさんの演奏に合わせて歌いま~す!聴いてください♪」

それは、ココロが得意としているバラード曲だった。
彼女もまた、音楽の力を持っており、鼓舞だけでなく体力・精神の癒しの歌も歌えるのだ。

「うっお~燃えてきた~!!次はあたし、出るね!!エルフのお姉さん、無理しないでね!!」
「ありがとう…私は下がろう…」
「こんなところでココロちゃんに会えたんだから、頑張らないとね!!」
ラシノスに代わって戦場に立ったのは、リサだった。彼女はココロのファンであり、あとでサインを約束した。

「ヤレ、長命種ノ次ハ人間ノ小娘カ…ナメラレタモノダ…!!」
オロチは尻尾を振り回し、リサに向かって瘴気の塊を投げ飛ばした。

「そんなのっ!!」
リサが回し蹴りで鋭い風を起こし、瘴気の塊を吹きとばした。そのルーズソックスは伊達ではない。

「成程、あの少女は格闘戦に長けているのか…!では…こうだ!!」
バサルトが斧を回転させ、オロチに投げつけた。鋭い回転をした斧がオロチの腹部に刺さる。
「とかげさんありあり~ん!!あそこ狙ってみるね!!うおりゃあ~~~~~~~~~っ!!!!!!!!!!」
斧が刺さった場所目掛けて、無数の拳を浴びせた。硬化している身体にもろ衝撃を受けて、オロチを包んでいた瘴気はみるみるうちに飛び散り、身体も小さくなっていった。

「これでどう!?…っていっても、まだピンピンしてるみたいだね~…」
「額に取り込まれた女王殿をなんとか引きはがすことはできんだろうか…」

「グギギ…小癪ナ真似ヲシオッテ…!」

オロチは何かがおかしいことにも感づいていた。
何故奴等は二人ずつでしか襲ってこないのか?無数にいた人間どもの群れはどこに消えたのか?
そう、オロチからは、スサノオの張った【結界】の外の景色が見えておらず、イズモの焼け野原、そしてギルバートの設置した大盾と戦っている2名しか映っていないないのだ。
なにかがおかしい、そう感づいていた…しかしオロチにその疑問を晴らす時間は存在しなかった。

「今身体の内部になにかが見えた…下がれ、俺が狙い撃つ」
「あったれ~~~~~~~~~~!!!!!」

先程、リサとバサルトの連撃でオロチの体内が露出。それは強い瘴気に包まれた、何か金属質の球体だった。
しれっと交代していて、現在の先頭はレイズとココロ。片や猟銃、片や魔導式クロスボウの使い手であり、互いに威力のある弾丸と光弾で露出し球体に直接射撃を開始した。

「グッグッ…グワァーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

この世の終わりのような、絶大な悲鳴が響き渡る。それはオロチの瘴気を司る【核】そのものであり、数々の連続攻撃で疲弊したオロチに対する最高の一手だった。
その時、オロチの額に張り付いたアマテラスに変化が起きた。【核】へのダメージの影響なのか、付着していた封印の結界がはがれ始めた。
その瞬間をギルバートが見逃さなかった。

「今だ!私が出る!!」

怯んだオロチの額に飛び乗り、アマテラスを包む結晶状の結界の周りのオロチの皮膚を剣で引き裂く。
結晶に包まれた状態だが、見事にアマテラスの救出に成功。苦しみ悶えるオロチを尻目に、ギルバートはアマテラスを優しく抱えて飛び降りた。

「でかしたぞ団長!!」

歓喜に湧く連合戦線の面々、そしてペンギン帝国の軍勢にも動きが。
「よーしアイシクル魔導砲、エネルギー充填完了!いつでも撃てます!!」
「うむ!姉上も救出され、おそらくオロチの【無勢陣】もなくなったはずじゃ!結界を解くぞ!!」

スサノオが張った結界が解け、砲台コンパネに座ったアーデルが気合を込めて発射のレバーを引いた。

「災いなす悪霊よ!これが我ら、ペンギンの魂の一撃だ!!受け取れェェェェェェェェェェェ!!!!!!」

砲身から高濃度の氷魔力とプラズマエネルギーから織り成す光線が発射!!オロチの身体に直撃し、周囲の瘴気ごと凍結させようとしていた。

「ソウカ…貴様ラ…ソウイウコトダッタカ…ヨクモ…吾輩ヲ…コケニシテクレタナ…許サン…!!」

そう言い残すと、オロチの肉体は完全に凍結。動かなくなった。

「やったか!?」
「うむ…と、言いたいところじゃが…奴を完全に斃すには神通力での封印しかない…女王が目を覚まさん限り、ローナの帰りを待つしかなかろう…」
スサノオは冷静だった。ここまで散々オロチとの死闘を繰り広げてきたが、これでもまだ一時的に封じ込めただけなのだ。
それに力こそは弱まったが、瘴気はまだ身体で感じる程度には残っている。

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「よし、伝えられることは全て伝えた…あとはお前次第だ!」
「ありがとうございます…握斗さん!!」

一方その頃、エリシオンの洞窟にてローナは握斗との修行を終え、オロチに対抗する技を体得していた。

「今向こうがどうなってるのかはわからねえ、気を付けて行ってこいよ!」
「はい!行ってきます!!」
「あいつに…ローナによろしくな…」
「え?ローナは私ですけど…」
「ああすまんすまん、お前さんの母ちゃんによろしくな!!」

握斗の最後の一言が気になるが、ローナは一人イズモへ急ぐ。
待っていてみんな…!!

-つづく-