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Pixiv版(毎週土曜2話ずつ更新)
アマテラスの覚悟により一時的にオロチの動きが封じられ、宮殿前の騎士団テントに合流するスサノオ。
スサノオが戻るとイズモ兵団及びイルミナ騎士団を招集させ、オロチの今の状態と今後の動向について伝えられた。
「…と、いうわけじゃ。今はなんとか女王が身を挺して封じ込めている」
「それじゃ…お母さんはもう助からないの!?」
「焦るでないローナ。女王を助けるためにも、あやつを再び封印するためにも、もう一度戦う必要がある」
「そこでじゃ、オロチを封印すべく…騎士団の力を貸していただきたい。ご助力願えるか…?」
スサノオがギルバートに頭を下げる。
「スサノオ殿、顔を上げてください。イズモの危機は我々イルミナ、いやエリシオンの危機でもあります。助太刀致しましょう。」
「団長…感謝する」
二人は熱く握手を交わす。
「ではヤツの包囲網を組むが…ローナ、お前は一度エリシオンへ行け。会ってほしい男がおるのだ」
「へっ?」
突然、予想とは違う指示に戸惑うローナ。
「スサノオ殿!まさかあの男を頼るおつもりか!!」
「この状況を打破するには…ヤツの知識が必要じゃ。そしてローナがその教えを飲み込む必要がある…ローナ、行けるな?」
「…はい!お母さんを助けられるなら…!!」
「うむ!座標は後でお前の端末に送っておく!今すぐにでも行ってこい!!」
スサノオに背中を押され、ローナは一人ゲートの方に駆け出していった。
「団長、すまんがローナと共に旅をした二人に伝えといてくれんか?」
「わかりました、あの二人も戦列に?」
「いや、騎士の娘はまだ傷が癒えんじゃろう。ローナが戻ってくるまで回復に専念するよう指示しといてくれい」
「承知。ではその後に共同ブリーフィングとしましょう。」
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一人ゲートを抜け、エリシオンの森に移動したローナは端末に送られた座標を確認した。
「ここって…あの時の!?」
指し示された場所はかつてクララ、狼傭兵レイズと共にゴブリン退治に入った洞窟だった。
あのとき確かに宝物庫の先に何か感じるものがあったが…。
現在は騎士団によりある程度管理されているようで、巡回の兵士が立っていた。
ローナは許可証代わりに端末を出し、奥を探索する。
あのとき宝物庫だった部屋に入ると、やはり違和感を感じた。
「この奥の岩…ひょっとして動く…!?」
大きな岩だが、両腕に神通力を集中して横にずらしてみた。
思った通り岩の陰には斜め下に連なる通路のようになっていた、ローナの体格なら普通に歩いて通れそうなほどの大きな道だ。さっきから強くなる妙な違和感を抑えつつ、恐る恐る奥へ歩いて行った。
奥まで入ると、大きな部屋になっていた。
部屋にはサングラスをかけ、黒衣を纏った男が座っていた。
「よぉ、ローナ。待ってたぜ」
「えっ!?」
突如男が気さくに話しかけてくる。何故私の名前を…!?
「すまね、自己紹介がまだだったな。俺の名は握斗(あくと)、訳あってこの洞窟の中に身を潜めてる」
「あっ…はい…でもどうして私の名前を…?」
「…お前さんのことはよく知ってるさ。うん、やはりアマテラスとよく似てるな」
「お母さんを知ってるの!?」
「ああ、まあ古い知り合いってとこだな」
不思議な雰囲気な握斗、だが不思議と嫌な感じではない。
「で、お前さんがここに来るってことは…あのオロチってヤツが復活しちまった…ってところか」
「はい、叔父さんがここに行って来いって」
「叔父さん…スサノオのオッサンか、相当切羽詰まってんだな…」
「実は…」
ローナはここまでの経緯を握斗に伝えた。
「ほ~んなるほどね…アマテラスが身を張って…ね」
「そうなんです、私は…お母さんを助けたいんです…!!」
「よ~しわかった、お前さんがオロチに勝てるかもしれない話なんだが…まず1つ、あいつの特性についてなんだが」
「特性?」
「ああ、これはオロチに限らずイズモ人特有の力ではあるらしいんだが、やり手の戦士は【敵が自分より多いと自身の力が強くなる】という特性がある」
「一対多…ってことですか?」
「ああ、間違いなくスサノオのオッサンは使えるだろうな。それにイズモの剣術はそもそもが一対多を想定した技ってのもそういう秘術があってのことなんだろうな」
「…それが、オロチの特性と何の関係が?」
「厄介なことにだがな…オロチはその特性があるってことだ」
「!?ということは…」
「ああ、奴に軍団戦を挑むのは紛れもなく自殺行為だ。一度に戦う人間は多くて3人までに抑えておいた方がいいだろうな」
これは、連合戦線にとっては間違いなく不利な情報だった。
「まあ、指示出してんのがスサノオのオッサンとギルバートなら雰囲気で察してくれるだろ。あの二人を信じようぜ」
「…はい」
「でもって次だが、今度はお前さんに覚えてほしい秘術だ。見た感じ神通力のコントロールはいい感じだが…残念ながらその程度じゃオロチを封じるには足りねえだろうな」
「そんな!?じゃあどうすれば…」
「焦るなって、そこで今から教えるのが役に立つって話だ」
焦るローナと不敵な笑いを見せる握斗。
「一言で言っちまえば、【周りから力を分けてもらう】というヤツだ。いうだけなら簡単なんだが、実際やるとするとそうもいかねえ。」
「ではどうすれば?」
「まず受け取るお前さんが精神を研ぎ澄ます必要がある、これはまあ当然だな?」
「はい」
「で、送る側なんだが…お前さんが信用されている必要があるんだ」
「信用…ですか」
「まあなんだ、イズモの連中もイルミナの連中もお前さんを信じてくれるだろうよ。心配すんなって!」
軽く笑いながらざっくりした説明をする。
「ま、結局はお前さん次第ってことだ。とりあえずこの技の伝授くらいならしてやれるが…やってくかい?」
「はい!お願いします!!」
「よく言った!俺に任せておけ!!!」
こうして、イズモを救うため突発的な修行が始まった。
-つづく-